へのじにまがる

2021年1月10日にニホンジカ♀2頭の捕獲があった。
1頭目は、罠が”しまるくん”で、ワイヤーは左前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真上2つ)。

2頭目は、罠が製品名不明の笠松式で、ワイヤーは右前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真下3つ)。

2頭目が掛かった罠は、押しバネを用いた仕掛けで、バネをスムーズに圧縮させるための塩ビパイプで出来た部品があるのだが、今回はそれがぐにゃりと曲がってしまっていた。♀であるが比較的大きな個体なので、ワイヤーを引っ張ってぐるぐる回った時に、ちょうどこの部品が木の幹に当たり、曲げられてしまったのだと思われる。曲がった部分を軽く火で炙り、柔らかくなったところでまっすぐに直したが、少し押しバネが引っ掛かるようになってしまった。まぁ使えないほどでは無いので問題ないのだが、何度も繰り返すと元に戻せないような状態で破損する可能性もある。

まとめてくるよ

2020年12月12-19日の間に、シカ♂4頭の捕獲があった。

2020年12月12日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真上2つ)。

2020年12月14日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右後脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真上から3,4番目)。

2020年12月17日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは左前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真上から5,6番目)。

2020年12月19日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくんL”で、ワイヤーは右前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真上から7-10番目)。

12月17日の分の写真を見ると分かるように、雪が降ったタイミングの前後で、立て続けに捕獲があったことになる。私の師匠は、嵐や寒波が来る前に動物が食い溜めをするため、悪天候の前後で捕獲が多くなる、というようなことをよく言う。師匠の捕獲は箱罠 (檻)によるものが多いのでその結論に至るのかも知れないが、括り罠メインの私の感覚では、食い溜めをするというよりは、環境条件が変わったタイミングで移動する個体が増えるので、捕獲が増えるのではないか、と考えている。居付きの個体に罠の設置場所がバレていたとしても、他所から流れてきた個体は知らずにあっさり掛かる、ということも考えられる。

12月19日に捕獲のあった罠には、オーエスピー商会の「ショックアブソーバー170」という器具を組み込んであった。これは2年以上前に3セット購入して、1つだけ罠に使用し設置していたのであるが、今回がこの器具を使った罠での初めての捕獲である。これだけの大型個体にも関わらず、脚を括った部分の損傷が少ないのはこの器具のお陰である可能性もあるが、単に捕獲から早期に発見しただけかも知れず、効果の程はまだ不明である。1つ言えることは、このショックアブソーバーはかなり重い。バネ本体に加え、シャックル・ヨリモドシ・ワイヤーといった部品も増えるので、複数の罠を持って山を歩き設置していくような作業時には、これらの重量増加分が結構な負担になる。使っていない2セットはそのうち加工して手持ちの罠に組み込もうと思うが、それ以上買い足して積極的に使っていこうという考えは今のところ無い。

しゅりょうないふ

狩猟で使うナイフの選び方について、書きたいと思う。

私が狩猟で主な対象としているのは、本州のニホンジカとニホンイノシシである。エゾシカやヒグマなどのより大型の哺乳類、あるいは鳥を対象とする場合には、適したナイフも変わってくると思う。

新たに狩猟を始めようという人から、どんなナイフが良いかと聞かれることがあるが、私は「刃渡り8cm以上で、刃の厚みがあり、シースナイフもしくはロックが確実にできるフォールディングナイフ、材質はステンレスが良い」と答えている。

刃渡り8cm以上というのは、放血のため首の血管を切ったり、枝肉まで解体したりするのに、最低でもそれくらいの長さは必要だろう、ということである。どうしてもやれと言われれば、刃渡り5,6cmのナイフでも何とかなるが、ある程度慣れたらの話である。わざわざ短いナイフを選ぶ理由も特に無いと思うので、刃渡りは8cm以上、できれば10cmぐらいの物を選ぶのがお勧めである。逆にあまり長すぎると、取り回しが悪い、重い、嵩張る、悪い意味で目立つ、といったデメリットが出てくる。刃渡り15cmを超える大型のサバイバルナイフのような物は、木の枝を叩き切ったり、薪を割ったりするのには便利だろうが、罠猟でも銃猟 (日帰りの巻狩・単独猟)でも、そういったことをすることはほぼ無いと言っていいと思う。罠の場合、邪魔な倒木や枝葉がある場合は事前に処理しておくので、普段から持ち歩いている必要はないし、そのための道具としては鋸や鉈を使う方がよい。銃猟の場合も、歩きやすい場所を選んで通れば済むことが殆どで、あまりガサガサやっては獲物が逃げてしまう。

次に刃の厚みであるが、フィッシュナイフのような薄い刃では、暴れる獣の首筋に突き刺す、といった使い方をするのに不安があるので、ある程度の厚みがある方が良い。材質や形状にも依るので、厚さが何mmあれば良い、とは言えないが、私が使っている、刃渡り10cmぐらいのシースナイフが厚さが5mm、別の同じく刃渡り約10cmのシースナイフで2.5mm、刃渡り約8cmのマルチツールの刃が2.3mm厚だった。5mm厚のものが重量もあり一番頑丈な感じだが、2.3mm厚のものでも小型のシカを放血させるのには問題なかった。獣をちゃんと固定し、確実な場所に刃を入られる自信があれば、大型のシカや猪が相手でも、私の使っている中で言うと2.5mm厚の軽いものの方が使いやすいように思うが、経験が少なく自信がない場合は、少し厚めの刃のものを使った方が安定しやすいかも知れない。

続いてシースナイフかフォールディングナイフか、という点であるが、ロック機構の無い、あるいは不安定なナイフは論外である。突き刺しに使えないのは勿論、解体作業を長時間行うにも不向きである。フォールディングナイフの利点は、全長が短くなるということしか無いので、1本目にはシースナイフを購入し、予備として2本目にフォールディングナイフを買うというのがお勧めである。狩猟では、罠にかかった動物を放血させ殺し、車で別の場所に運んでから解体、という流れになることも多いのだが、止め刺しをした場所にナイフを忘れてきてしまうことが稀にある。こうした場合には、フォールディングナイフでも予備に持っておくと役に立つ。

刃の材質については、色々あって私もそれほど詳しくはないのであるが、狩猟では水に濡れることも多いので、ステンレスの方が良いと思っている。研ぎ易さや切れ味よりも、管理が楽なことが優先である。

他に選ぶ際の基準になりそうなもので言うと、まずは握りやすいハンドル形状・材質で、なるべくなら鍔がある方が良い。これは、血や脂が付いても握った部分が滑りにくく、刃で自分の指を切ってしまわないためである。あとは、ハンドルやシースが手入れがしやすい材質かどうか。革や木材は見た目や質感が良いが、長持ちさせるには手入れの必要なものである。狩猟で使っていく上では、傷や汚れは避けられない。

最後にデザインについて。狩猟は刃物を所持する正当な理由になるので、法律で規制されているもの (飛び出しナイフ等)でなければ、何でも良いといえば良いのだが、所持あるいは使用しているのを他人に見られた場合、恐怖感を与えないデザインというのは重要だと思っている。あるいは、警察官などに職務質問や任意の所持品検査 (任意と言いつつ断れないことが多い)をされる可能性を考えた場合、タクティカルナイフやミリタリーナイフと呼ばれるデザインの物が、持ち歩くのに相応しいかということは、買う前に考えたほうが良いと思う。

色々書いてきたが、一般にハンティングナイフとして売られているものであれば、普通は狩猟用途で困らない。あとは自分の手に合った使いやすいものを選ぶのが大事である。使っているものに不満が出てきたら、買い足したり買い替えたりすればいいので、1本目から高価なナイフを購入する必要も無い。