まとめてくるよ

2020年12月12-19日の間に、シカ♂4頭の捕獲があった。

2020年12月12日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真上2つ)。

2020年12月14日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右後脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真上から3,4番目)。

2020年12月17日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは左前脚の副蹄より上に掛かっていた (写真上から5,6番目)。

2020年12月19日に鹿♂1頭の捕獲があった。罠は”しまるくんL”で、ワイヤーは右前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真上から7-10番目)。

12月17日の分の写真を見ると分かるように、雪が降ったタイミングの前後で、立て続けに捕獲があったことになる。私の師匠は、嵐や寒波が来る前に動物が食い溜めをするため、悪天候の前後で捕獲が多くなる、というようなことをよく言う。師匠の捕獲は箱罠 (檻)によるものが多いのでその結論に至るのかも知れないが、括り罠メインの私の感覚では、食い溜めをするというよりは、環境条件が変わったタイミングで移動する個体が増えるので、捕獲が増えるのではないか、と考えている。居付きの個体に罠の設置場所がバレていたとしても、他所から流れてきた個体は知らずにあっさり掛かる、ということも考えられる。

12月19日に捕獲のあった罠には、オーエスピー商会の「ショックアブソーバー170」という器具を組み込んであった。これは2年以上前に3セット購入して、1つだけ罠に使用し設置していたのであるが、今回がこの器具を使った罠での初めての捕獲である。これだけの大型個体にも関わらず、脚を括った部分の損傷が少ないのはこの器具のお陰である可能性もあるが、単に捕獲から早期に発見しただけかも知れず、効果の程はまだ不明である。1つ言えることは、このショックアブソーバーはかなり重い。バネ本体に加え、シャックル・ヨリモドシ・ワイヤーといった部品も増えるので、複数の罠を持って山を歩き設置していくような作業時には、これらの重量増加分が結構な負担になる。使っていない2セットはそのうち加工して手持ちの罠に組み込もうと思うが、それ以上買い足して積極的に使っていこうという考えは今のところ無い。

りょうきにむけて

現在、私が罠を設置できる場所というのは、許可の区分で言うと、

(1) 狩猟者登録をしている都道府県の狩猟禁止区域以外の全域 (通常の狩猟としてのみ行う)
(2) 所属する猟友会の会員全員に許可が下りている有害鳥獣捕獲の区域 (有害鳥獣捕獲および狩猟として行う)
(3) 所属する猟友会の一部会員に許可が下りている鳥獣保護区での有害鳥獣捕獲 (有害鳥獣捕獲としてのみ行う)

の3種類がある。これまで、猟期以外は(3)の場所を中心に罠を設置し複数人で交代で見廻りを実施、猟期中は(3)の場所に加えて(2)の場所にも個人で罠を設置し、毎日見廻りを実施する、という体制で捕獲を行ってきた。

それに加えて今年は、(1)の場所にも個人で罠を設置することにしたので、猟期の少し前、11月8日から(2)の場所で罠を設置する作業を開始した。京都市では現在、有害鳥獣捕獲の許可は一年を通して出ているので、(2)と(3)の場所ではほぼ年中罠を設置しておくことが可能である (一部自粛期間あり)。(1)のエリアでは、通常猟期 (猪・鹿を対象とした延長期間含む)のみ狩猟として罠が設置できるので、猟期開始の11月15日より前から(2)の場所での設置を行い、開始後すぐに(1)の場所での設置に入れるようにしよう、という作戦である。

ぎょうむぼうがい

2018/11/1と2018/11/13に、有害鳥獣捕獲のため設置していた檻にかかったニホンジカを、何者かによって逃されるという被害が生じた。

2回とも同じ檻で逃されてしまったのであるが、その顛末を記す。

11/1は、私が午後に檻の確認に行くと、写真上のように扉が落ちていて、中に動物はいなかった。

檻の場合、上から落ちてくる枝葉や、中の餌を食べに来る小鳥などによって、仕掛けが作動し扉が落ちることもあるが、檻の中の糠が無くなっており、踏み荒らした跡もあったので、大型動物が入って扉が落ちたはずである。

私が不思議に思っていると、近くで作業していた人から、午前中に見たときは小さいシカが入っていた、との証言を得る。

この檻は、一旦落ちた扉が動物の力で持ち上げられることがないよう、ロックがかかる仕組みになっている (写真下参照)ので、人間以外が扉を開けるのは不可能である。

私は最初、同業者が何らかの理由で檻に入ったシカを殺して持ち去ったのではないかと考えたが、血の跡や引き摺った跡がない上、この場所に車で入るには施錠された門を通らないといけないため、その可能性は低いという結論に達した。

持ち去られたのではないとすると、逃された、ということになる。

証言によれば、檻に入っていたのは小さいシカだったということなので、角が無い個体であったとすると、人が入口正面に立って扉を持ち上げても、逃がす際に怪我をする心配はあまりない。

一応、この檻を置いている場所の施設管理者や、共に有害鳥獣捕獲を行っている人に報告・相談したが、この日は「まぁこんなこともあるか」ぐらいの気持ちで諦めることにした。

11/13は、私が早朝に同じ檻を見に行くと、子ジカが入っているのを発見した。

しかし私はこの日、朝から昼過ぎまで仕事が入っていたため、仕事が終わってからシカを回収することにし、子ジカが入っているのを確認しただけでその場を立ち去った。

午後になって仕事が終わったので、共猟者と電話で待ち合わせ、一緒に檻に入ったシカを回収しに行ったのであるが、着いてみるとなんと檻の中はもぬけの殻。

血の跡や引き摺った跡が無いのは前回と同じ、またしても逃されてしまったのだ。

同じ場所、同じ檻で短期間に2度も逃された上、今回は檻に入っていたシカを自分の目で確認している分、逃されたのが腹立たしい。

シカを始めとする野生動物は、無主物 (所有者のない動産)であると一般に理解されるが、

民法 第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

とあるので、罠に野生のシカが掛かった場合、そのシカに対する所有権は、罠の設置者が取得する、と考えられる。

罠に掛かったシカを、罠の設置者以外が持ち去ったとすると、これは窃盗罪が適用できると思うのだが、逃したとなると窃取に当たらず、窃盗罪にはならないかも知れない。

そういった場合でも、業務妨害罪という便利な罪状があり、このうち威力を用いる場合は威力業務妨害罪が問える、と考えられる。この罪状には”三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金”が処される。

有害鳥獣捕獲は”業務”として十分成り立つだろうし、檻の扉をあけて中のシカを逃がす行為は”威力”の行使と判断できる。

従事者である私からすれば、シカ2頭を逃されたことにより、捕獲奨励金として支払われる16,000円〜44,000円 (幼獣か成獣かで変動)の損失を被っており、シカが檻に捕らえられるまでに費やした時間と労力、それにエサ代やガソリン代などの経費が無駄にされたわけである。

逃した人はおそらく、小さなシカが檻に入っているのを見て可哀想に思い、逃して”あげた”、殺生をする野蛮な猟師から救って”やった”、ぐらいに思っているのだろうが、逃された狩猟者 (有害鳥獣捕獲の従事者)と、食害に苦しんで捕獲を依頼している農業従事者からすれば、酷い話である。

しかし犯人 (おそらく2回は同一人物)は、単なる好奇心や出来心でなく、それなりに強い意志を持って、檻に入ったシカを逃がすという行為に及んでいると予想される。

そういった相手には、近くにメッセージを書いた紙をぶら下げて、シカを逃さないようにお願い、あるいは警告するといった方法では効果がないと私は考えたので、もっと抑止力を発揮すると思われる2つの対策を行うことにした。

1つは、自動撮影カメラの設置である。

動物の生息調査に用いられる自動撮影カメラを檻の近くに設置し、檻の扉を開けようとすれば顔が写るように設置した。蓋は勝手に開けられて記録媒体や電池を抜かれることのないよう南京錠で固定、本体も太めの幹に回したワイヤーと南京錠で固定した。これならそう簡単には自動撮影カメラを持ち去ることはできない。

自動撮影カメラは目立つ位置に設置したので、開けるところを実際に撮影し警察に突き出してやりたいというよりは、犯人が檻を開ける間にカメラに気付くことで、抑止ができればよいと考えている。

2つ目は、捕獲発見時に檻の扉を南京錠とワイヤーで固定することである。

私は原付きで罠を見廻りし、捕獲があった場合は軽トラで回収する、というパターンが多いので、原付きで見廻って発見したあと、軽トラで戻ってくる前に逃される可能性がある。そこで、原付での見廻り時に、檻の扉を固定できるワイヤーと南京錠のセットを持ち歩き、捕獲を認めた場合はそれらで檻の扉と本体を留め、南京錠を開けなければ檻の扉を開けることができないようにするのである。

この対策は、逃される前に檻に入った獲物を確認しなければ実行できないが、 11/13の場合のように、自ら捕獲を確認した個体を逃される、という事態は避けられる。また、もし犯人が檻の本体と扉を固定しているワイヤーを切るか南京錠を破壊するなどした場合、器物損壊罪も適用できることになり罪が重くなると考えられる。

とりあえずこの2つの対策を行って様子を見るが、同様の事態や何らかの進展があった場合には、随時このBlogに書こうと思う。