くらやみのなかで

2019/1/30にニホンジカ♀1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右後脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた。

冬季(猟期中)の猟で気をつけるべきことの1つに、「なるべく暗くなる前に野外作業を終わらせる」というのがある。当たり前だが冬場は日没が早く、猟を行う山中の林内となると、日没より前に暗くなる。地域や斜面の向きにも依るが、16時を過ぎるともう暗いという場合もある。銃の場合は日没後に発砲すると違反になるが、罠の場合は特に規制がないので問題ないかと言うと、そんなことはない。暗くなってしまうと、あらゆる作業で危険のリスクが上がってしまう。

だから人に教えるときは、「罠の見廻りはなるべく日中の早い時間にすべし」、「遅くとも15時には捕獲を発見しないと、当日の処理は無理」と言っているが、自分自身がそれを守れるかと言うと、必ずしもそのようなことは無い。仕事の都合とか、他人の捕獲を手伝っていたとか、あるいは天候の具合とかで、発見や処理が遅れてしまうこともある。

この個体も、発見が遅れたために止め刺しの開始が日没少し前になってしまい、終わった時には完全に日が落ちていた。幸い、捕獲場所が小川を挟んだ車道の近くだったので、軽トラのヘッドライトで照らしながら、自分の頭にもヘッドライトを装備しての作業になったが、怪我することもなく単独で無事に終えることができた。

本当に危険な場合は、処理を翌日の明るい時間帯に行うのが適切だが、そうなると捕獲個体の脚切りや死亡を覚悟する必要があり、生きて止め刺し出来た場合でも、肉の質は落ちると考えられる。

うんのないやつ

2019/1/15に有害鳥獣捕獲をしている場所で、ニホンジカ♀1頭の捕獲があった。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右後脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた。

くくり罠のワイヤーが後脚にかかるのは10回に1回ほどあり、それほど珍しいことではないが、この個体はなぜか左後脚も怪我していた (写真がぶれていて見難いが)。不思議に思って近くに設置してあった別の罠を確認してみると、10m程離れた場所にあった罠が弾いていた。罠と罠の間隔が10mというのは近すぎると思われるだろうが、この有害鳥獣捕獲をしているエリアは、罠を設置できる面積が限られているため、狭い場所に複数の罠を設置している。この状況から察するに、この個体は空ハジキしていた隣の罠に掛かった後、どうにかして罠から脱したが、発見時に掛かっていた罠に再度捕らえられてしまった、という可能性がある。そうだとすると、真に不運な奴である。

ただ、左後脚が隣の罠でワイヤーの掛かった脚だとすると、そこから脱出するには普通なら脚を切らなければならないはずで、脚が完全に切れていないのは不可思議である。

なお、この場所では2日後の2019/1/17にもニホンジカ♀1頭の捕獲があり、罠は”しまるくんL”で、ワイヤーは左前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真なし)。

ねんまつのにとう

(1番上の写真) 2018/12/29にニホンジカ♂1頭を”だらずわな”で捕獲した。ワイヤーは左前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた。うっすらと雪が積もった日であったが、解体時に切り取った肉を雪の上に置けるほどは積もっていない。

(2番目の写真から) 2018/12/30にもニホンジカ♀1頭を”だらずわな”で捕獲した。ワイヤーは右前脚の副蹄の上に掛かっていた。昨日捕獲のあった場所と近い場所であるが、雪がほとんど溶けているのが見て取れる。

この個体を捕獲した罠は、地面に露出した木の根を跨いだところに設置してあった。何もないところでは、罠の前後に適当な太さの木の枝を置いて獣に跨がせ、罠の位置を踏むように工夫をするが、この場所のように木の根などがちょうど良い位置にあれば、それを利用して罠の設置場所を決めることもある。掘りにくい場所なので比較的浅い穴になっているが、ワイヤーは脚の上部に掛かっており、良い具合であった。

腹を開いてみると、小さい胎児が既にいた。私がこれまでに取り出した胎児の中では最も小さいと思われる。当然、色は殆どついておらず、耳も頭にひっついたままである。