わなのいきかた

自立した社会人 (1年目)として働きながら、罠猟を続けている私の生活スタイルについて書こうと思う。

普通に考えて、日中にフルタイムの職に就いている人は、罠猟を単独で行うことは困難である。自宅の裏庭に檻を1つ置く程度であれば、一般的なサラリーマンとして働きながら罠を運用することもできるだろうが (同じ猟友会にもそうしている方がいる)、5個とか10個とかの罠を毎日見廻るとなると、それだけで結構な労働である。早起きをしたり昼休みに出て見廻りが可能だとしても、捕獲があった場合にどうするかが問題になる。

たまに、であれば他の狩猟者に頼んで処理してもらうのも良いが、一週間のうち自分で処理できるのが1,2日では、罠猟を主導的に行っているとは言いがたい。

連続して罠を設置するのであれば、最低でも週に5日、半日以上予定を空けられる日が無いと厳しいと感じる。それが無理なら誰かと共同で設置して、見廻りや処理を分担せねばなるまい。

私は大学院生の時に罠猟を始めたが、卒業後も罠猟を続けたかったので、フルタイムの職に就くことは端から検討していなかった。学生時分も、アルバイトは連絡すればすぐに休めるもの、出勤日を変更できるものしか基本的にはしていない。

現在の私は狩猟以外の仕事を3つ掛け持ちしているが、メインの職は出社するのが週2回半日で、あとは在宅である。これに週1半日の副業が1つと、月2,3回全日の副業を1つしている。最後に挙げた月2,3回全日の仕事がある日は、流石に捕獲があった場合の処理が難しい(暗くなるのが早い冬季は特に)が、それでも見廻りは出勤前に行えるし、それ以外の日はほぼ毎日、半日以上空けられるようになっている。

収入は前述の3つの仕事を合わせて、手取りが約20万円。それ以外の収入が年に50万円程度で、年金と健康保険料はメインの仕事で給与から支払われている。派手な暮らしはできないが、これなら地方都市で一人暮らしをするのには十分である。

自分で言うのもなんであるが、私はそれなりにいい大学を出ているので、大企業でフルタイムの仕事に就けば、今の歳でも年収500万円くらいは十分期待でき (私は社会人1年目だが、大学の博士課程3年を終えてからなので、同世代は修士卒で4年目、学部卒なら6年目である)、最終的には年収1500万円程度を目指せると思うのだが、今の生活スタイルを続けようと思うと、年齢に応じて多少収入が増えても、年収は500万円程度までしか増えないと予想している。

しかしありがたいことに、私の両親は安定した収入を得ていて借金がなく健康、私自身も目立った健康上・金銭上の問題を抱えていないので、なんとしてでも稼がなければという圧力が無い。日中に自由な時間が持てる生活だと、銀行や役所に行くのも簡単である。何より好きなことを続けられる生活というのは、ストレスに耐えながら高収入を得るよりずっと楽しい (と思う)。

このように、仕事をしながらちゃんと罠猟をしようと思うなら、自由な時間を日中に確保するため、割りきった職の選択が必要である。在宅、短時間の出社、あるいは自由に休みをとれる仕事に就こうと思えば、それなりに技術を持っていないと難しいだろう。フルタイムに比べて低収入になるのも仕方ない。しかしこれが私の罠猟師として選択した生き方である。まだ仕事をしながらの罠猟は1年目なので、今後どうなっていくかは分からないが、折に触れて経過を報告したいと思う。

きせきのかかり

2018/02/13に、有害鳥獣駆除を行っているところで♂と♀を1頭ずつ、2頭を捕獲した。

♂は比較的大型で、罠は”しまるくん”、ワイヤーは左前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた (写真上2つ)。

♀は小型で、罠は”だらずわな”、そしてこいつのワイヤーはなんと左前脚の主蹄の間に掛かっていた (写真下2つ)。こんなワイヤーの掛かり方は初めてである。この♀は発見時に死亡していたが、周囲を踏み荒らした形跡が殆ど無いため、罠が弾いたことに驚いて飛び上がった後、ワイヤーに引っ張られ転倒、打ち所が悪くてすぐに衰弱したものと考えられる。このワイヤーの掛かり方では、ある程度の力で引っ張ればすぐに外れてしまいそうなので、前述のようなシナリオが想定される。

けいぞくはちから

これは古い考えというか、平等の原則から外れる意見であるが、狩猟においては、やはり数を獲っている人が偉い、と見なされる。

いくら偉そうに狩猟の技法を語ったところで、累積の捕獲数・出動数が少なければ、何ら説得力がない。

あるいは長年の経験があっても、最近ほとんど出猟していないとなれば、正当な主張をしても押し負けてしまう。

猟師であり続けるためには、当然ながら獲物を撮り続けていなければならない。山に入り続けていなければならないのである。

罠猟の場合、免許をとっても1,2回の猟期を経ただけで辞めてしまう、あるいはほとんど出動が無くなってしまう人が一定数いる。シーズン中に1匹や2匹獲って満足という人もいるだろうが、それだと技術はなかなか向上していかない。たくさん罠をかけて、毎日見廻って、解体処理の経験を積み重ねていけば、下手であっても下手なりに素早くできるようになったり、色々なことに気付けるようになるものである。