うれしいごさん

2016年2月28日にニホンイノシシの♂を捕獲した。精肉が約40kg取れたので、体重は80kg以上あると思われる。罠は”しまるくん”で、ワイヤーは右足の主蹄の上に掛かっていた。

今年度の猟期は最初の1ヶ月こそ捕獲が多く順調であったが、その後はさっぱりで、このイノシシが来るまで1ヶ月以上、シカも含めて捕獲が無かった。京都市でシカの捕獲奨励金が支給されるのは今年度の場合、2月末日までだったので、3月に入ったら罠を回収しようと思っていたところだった。結局シカの捕獲は増えなかったのであるが、シカで4000円もらうよりも、イノシシの方が私にとっては価値がある。

大型のイノシシを解体するのは時間の掛かる作業なので、お世話になっている師匠に加え、大体いつも1,2名の先輩猟師と捌くのであるが、このイノシシを見た老齢の猟師が開口一番に、「遠くから来た奴やな」と言った。新米の私にはそう判断できる理由が分からなかったので尋ねてみると、蹄が磨り減っているから、という答えであった。言われてみると確かに、これまで獲ってきた個体と比べて主蹄が短く磨り減っている気がする。イノシシの♂成獣は今の時期、♀を求めて山から山へ移動すると言われているので、この個体も駆け巡っていたとすれば、その分蹄が磨り減ったということは考えられる。もっとも、蹄の減り具合はイノシシが活動する場所の地質や地形に大きく影響されるであろうし、どういった経年変化があるかも分からない。

ぼたんじるうまい

私が思うに、猪肉は焼くよりも煮る方が良い。煮るとなると、臭みを消すために味噌、酒、生姜等を用いることが多く、それに加えて醤油、味醂などを入れて味をつければ、まず失敗せずに猪肉を調理できる。

ところで、猪肉を用いた料理としては、牡丹鍋の方が知名度として上であろう。牡丹”鍋”と牡丹”汁”は材料に違いがあるわけではなく、調理の進行方法に差異がある。鍋というのは、家庭でやる場合と料理店では異なるかも知れないが、食卓の上に設置された鍋に次々と材料を投入しながら、煮えた頃合いを見計らって取り出し食べる、というイメージが強い。この方法で行う牡丹鍋の利点は、肉を最適なタイミングで取り出すことができる、ということだ。猪肉は完全に火を通して食べるべきだが、煮すぎてしまっては肉本体に味が残らない。よって、猪肉を肉として堪能するためには、目の前で少しずつ煮ながら良い具合になったところで取り出しすぐ食べる、というのが合理的である。また、鍋の場合は生の状態の材料が食卓に置かれるので、牡丹の名の由来となった綺麗な赤色の肉質と白い脂肪の対比を目で見て楽しむということもできる。

しかしながら、材料を次々に入れて次々に食べる、という鍋方式には欠点もある。それは灰汁の取り出しが難しいということである。猪肉を煮ると灰汁が大量に出るので、一緒に煮ている野菜などもおいしく食べるためには灰汁の丁寧な除去が欠かせない。これを怠ると、最初のうちはよいが、後半になるにつれて汁が濁り酷い状態になってしまうのだ。連続した調理を前提としない牡丹汁では、この欠点が解消される。まず肉を茹でて、灰汁を完全に除去してから野菜と調味料を投入すればよい。火の通り具合をきちんと調節したければ、肉と野菜を別々に煮る。

私が作る牡丹汁の材料は猪肉の他に、大根、ネギ、油揚、竹輪、椎茸、蒟蒻などである。およそ和風の煮物に用いられる材料であれば何でも構わないと思う。調味料は、酒、味醂、味噌、醤油、生姜である。味噌は普通の混合味噌だが、甘めが好きなら麦味噌も良い。

ようやくきたか

罠にかかったニホンイノシシ♂イノシシサークル散弾銃で撃たれたニホンイノシシ♂2015年12月13日にニホンイノシシの♂を捕獲した。精肉が約12kg取れたので、体重は30kg程度と見られ、生まれてから2年目の個体と思われる。罠は”だらず罠”で、ワイヤーは左足の副蹄より上にかかっていた。

今期はこれでシカと合わせて6頭目の獲物となるが、これまで空ハジキは2件しか発生していない。捕獲数の3倍ほど空ハジキが発生していた昨年度と比べると大分改善されているようで嬉しい。

今回捕獲のあった場所は土が掘りやすかったのか、小型の個体でありながら立派なイノシシサークルが形成されていた。もちろん前日も罠を見廻っているので、一晩でこれだけ掘ったことになる。

通常猟期の開始から約1ヶ月でやっとイノシシを捕獲できた。