ばいくのりてん

前の記事で、私が罠の見廻りに使っているカブを紹介したが (参照: しゅりょうばいく – 狩場の馬鹿力)、今回は見廻りに原付を使う利点について書こうと思う。

狩猟者が最もよく使っていると思われる、軽自動車 (軽トラ、ジムニー等)との比較で話を進めて行く。

まず第一に、二輪は費用が安い。購入費も維持費も燃費も、原付は軽トラに比べて圧倒的に低い。燃費について考えてみると、軽トラやジムニーで実燃費が20km/Lを超えるのは困難であるが、カブなら50km/Lは余裕で超えることができ、原付二種の範囲なら公称燃費は概ね50km/L以上あるので、軽自動車を使うのに比べてガソリンの消費を抑えることができる。

第二に、二輪は見廻りが速い。普通、罠の見廻りで高速道路を走ることは無いと思うので、法令速度を守る前提なら、軽自動車でも原付二種でも、制限速度60km/hまでの一般道で出せるスピードは同じである。私の乗っている70ccのカブでは、上り坂で加速が不十分と感じる場面も多々あり、軽自動車の方が速そうにも思えるが、一般道での速度差は、林道で消費する時間の差に比べれば、微々たるものである。一度未舗装路に入ってしまえば、積雪が無い限り、二輪の方が圧倒的に取り回しが良く、短時間で罠をチェックできる。その理由として、車体が小さいために軽自動車よりも林道の奥まで入って行きやすく、転回も場所を選ばず可能で、障害物を交わして走行に適したラインを選べばスピードを出しやすい、といったことが挙げられる。加えて、車 (原付)を降りて罠を見に行く際は、長靴を履く場面が多いと思うが、一般的に長靴を履いたまま自動車の運転をすることは推奨されず、車を降りる度に靴を履き替える必要があるが、二輪の場合は長靴を履いたままで運転に支障のない車種がほとんどなので、履き替えが不要で時間を短縮できる、というのも重要な差である。

そして第三に、二輪はすれ違いや置き場所で困らない。林道やそれに続く舗装路は、軽自動車同士ではすれ違えない場所が多いが、軽自動車と二輪なら余裕を持ってすれ違える場面が多く、そうでなくても二輪は転回が容易なので、細い道で他の車と出会ってもスムーズである。地元の人や同業者とすれ違うときに迷惑をかけないというのは、気持ち的にだいぶ楽になる。

逆に欠点としては、積載可能量が少なくシカやイノシシといった獲物を丸ごと運ぶことができない (私は二輪で牽引できるリヤカーを持っているが、毎回の見廻りで引っ張るわけにはいかない)、という当たり前の点に加え、悪天候時の快適性、積雪時の走破性では4輪の自動車にとても敵わない。また、若いうちはいいが、歳を取って反応速度が落ちてくると二輪の運転はキツい、というのも問題である。

しゅりょうばいく

私が狩猟で罠の見廻りに使っているバイクはこれだ!

HondaのSUPER CUB 70に、前カゴ、センターバック、リアロングキャリア、リアボックス、コンビニフックを取り付け積載量を増している。あと、リアサスがヘタっていたのでYSSのものに交換している。

カブのリアボックスとしてド定番の、アイリスオーヤマ 密閉RVBOX カギ付 460 (通称:アイリスBOX)を、結束バンド4本で固定している。結束バンドはロックが解除できるタイプのものを使用しているので、使わないときは簡単に取り外しできる。たまに結束バンドが切れることがあるが、1本切れた状態で走るとボックスがガタつくのが分かるので、ボックスの中に常備している結束バンドと交換する。容量は30Lあり、色々入って便利だが、私が使っている括り罠のねじりバネは斜めにしないと収まらず、数はそれほど入れられない。

左側には2人乗り用の足掛けを利用して、シャベルをこれまた結束バンドで結わえ付けている。これを付けていても運転に支障は無いが、乗り降りがしにくくなるので、普段の見廻りではシャベルを持っていかない。

センターバックには、整備用のレンチ、剪定ノコギリ、ハリガネの束、など比較的重い物を入れている。リアボックスではなくセンターバックに入れるのは、重心が後ろに下がりすぎると運転がしづらいからという理由である。左側のコンビニフックには、荷物を括るためのゴム紐をぶら下げている。アイリスBOXの前方に物を載せて運ぶときに使う。

右側のコンビニフックには、コマセバケツを引っ掛けている。このバケツは蓋が付いており、糠を撒いたり、罠の設置時に掘った土を入れたりするのに使う。センターバックが邪魔でバケツの取っ手を直にコンビニフックへ引っ掛けられなくなったので、結束バンドをを輪っかにして調節している。ありがたや、結束バンド。

標準のリアキャリアからリアロングキャリアにしていることで、アイリスBOXを後方へ移動させることができ、デイパックを背負っても快適に座ることができる。背負ったデイパックの下には若干の空間が残るので、先述したようにアイリスBOXの前に荷物を積むことができる。アイリスBOXに入りにくい括り罠のねじりバネを載せたり、米袋に入れた糠を載せたりしている。

前カゴは普段、ヘルメットを入れるのに使っているが、括り罠で使う塩ビパイプを運ぶのに重宝する。肉の塊を入れた袋を載せたこともあるが、前カゴに重いものを載せるとハンドル操作がしにくくなる。走行中にカゴから物が落ちると危険なので、かご用のネットは必須である。

これ以外に、サイドボックスを取り付けていた時もあったのだが、そこまで荷物の量を増やさなくてもいいだろうという判断で、現在は装備していない。他にも、前カゴを大きくするとか、リヤボックスを郵政ボックスにするとか、更に積載量を増やす方法はあるのだが、取り回しを考えて今の状態に落ち着いた。

林道を走る上で、タイヤ径の大きいSUPER CUB (17inch)は、小径タイヤを備える原付きスクーター (10-12inchが多い)に比べ有利である。SUPER CUBシリーズでも新聞配達用のProだと14inchであるが、それでもスクーターよりはスペック的にはマシである。

しかにけられて

2017/01/31にニホンジカ♀を捕獲した。罠は”しまるくんL”で、ワイヤーは右前脚の主蹄と副蹄の間に掛かっていた。ここまで”しまるくんL”で3頭のニホンジカを捕獲したが、全て主蹄と副蹄の間にワイヤーが掛かっていた。バネの弾きとワイヤーの締まり具合で、”しまりくん”よりも括る位置が下になる傾向が確かにあるのかも知れない。

今回は首と後脚の両方にロープを掛け、括り罠のワイヤーと合わせて3点で固定してからナイフで首を刺し放血させた。ところが、後脚に掛けたロープの締りが緩かったせいで、ナイフを刺した時に脚がロープから抜け、私の腕を蹴られてしまった。幸い怪我はなかったが、今後はより気をつけようと思った。斜面を駆け上がるシカの原動力である後ろ脚のキックは、小さい♀であってもかなりの力がある。