すこしおおきく

15021301 2015/02/13にニホンジカ♀が罠にかかっていた。罠は”げんごろう”の”だらずわな”で、ワイヤーは右前脚の副蹄より下にかかっていた。これが通常猟期最後の捕獲となったが、京都ではシカとイノシシを対象とした猟期が約一ヶ月延長されているので、もう少しの期間、猟が可能である。

ニホンジカの胎児 ♀ということで、前回と同様、胎児を取り出してみた。

ニホンジカ胎児の脚部 少し前に獲った雌の胎内にいた胎児と比べると、蹄に色が付いている他、肌もトゥルトゥルだったのが少しゴワゴワとしているように見える。

ニホンジカ胎児のへその緒

あらたなめをつむ

罠にかかったニホンジカ♀ 2015/02/03にニホンジカ♀が罠にかかっていた。罠はオーエスピー商会のしまるくん (12cm)。ワイヤーは右後脚にかかっていた。これまでに私が足括り罠で捕獲した12匹の獣はすべて前脚にワイヤーがかかっており、後脚にかかったのは初である。師匠によると、ワイヤーが後脚にかかった場合、獣はより勢いをつけてワイヤーを引っ張ることができるので、脚切りが生じる可能性が上がるという。同じ理由かどうか分からないが、今回罠にかかったニホンジカは、ワイヤーの端を結わえつけていた直径7〜8cmの木を根っこから引き抜き、逃走を図っていた。そのため私が発見した時点では、罠の設置場所から10m程度離れた場所まで移動していた。ただ、ワイヤーを結わえていた木は3m以上の高さがあり、それを引き摺ったまま林内を移動するということは土台無理で、結果別の木に引っかかって足止めされていた。このように、固定が不安定な状態だったので、私は罠のワイヤーとは別にロープをシカの首にかけ、身動き取れないようにしてから止め刺しを行った。

ニホンジカの胎児1 今回捕獲したのは♀の成獣だったので、お腹の中に胎児がいた。ニホンジカ♀の成獣は毎年1頭ずつ子を生む。今回取り出した胎児は、頭から尾までが約30cm、まだまだ小さい。

ニホンジカの退治2 (脚) しかしながら、シカの特徴はすでにあり、足の蹄も色や硬さは別にして、親と全く同じ形である。

ニホンジカの胎児3 (頭) 耳は後頭部に左右重なって引っ付いている。

ニホンジカの胎児4 (尾) 尾もちゃんとある。

 私はこの胎児を骨格標本作成のため持ち帰ったが、Wikipediaによると鹿の胎児を薬用として用いる風習があったようである (鹿のさご – Wikipedia)。ただ、「鹿のさご」で検索してもWikipediaの記述以外に有用そうな情報は見当たらないので、古い文献にあるのみなのか、不明な点が多い。鹿の駆除という名目からすると、♂を獲るより♀を獲る方が効果があるし、子供が産まれる前に穫れたのは良いことである。胎児の観察もなかなか興味深いものであった。

じつにもたいなし

罠にかかったニホンジカ♂ 2015/01/19にニホンジカ♂が罠にかかっていた。かかってはいたが、死んでいた。昨年4月にも同じ場所でシカが罠にかかり死んでいたが、これも♂だった。罠の見廻りは交代で毎日していたのであるが、それでも死んでしまうときは死んでしまう。罠は”げんごろう”の”だらずわな”で、ワイヤーは右前脚の副蹄より下にかかっていた。角の具合から2年目の個体と思われる。

ニホンジカがかかった罠の位置関係 写真で赤い丸が罠の作動地点、青がワイヤーの根元を括り付けてあった木、そして緑の線が獣道である。写っている範囲では無いが、写真の手前側に糠を撒いていた。この場所は鳥獣保護区なのであるが、農業被害軽減のため行政から依頼を受けて有害鳥獣捕獲をしている場所である。罠をかけられる範囲は狭いし、落陽広葉樹林なので落ち葉が積もっていて獣道ははっきりしないなど難点もあるのだが、シカの数はそれなりにいる。

ワイヤーで括られたニホンジカの脚 鹿が死亡していた理由としては、ワイヤーが脚にかかった状態でぐるぐると移動した結果、付近にあった細い木などに絡まり、勢い余って転倒、体を打ち付けたことが原因と思われる。罠にかかった獣の死亡を避けるため、ワイヤーは長く (3m程度)しておいた方が良いという話も聞くが、私の師匠は脚切りを避けるためワイヤーは短く (1m程度)すべきだと言う。このあたりは人により意見が分かれる。