ことしのきろく

2015年度の猟期が延長も含めて終わったので、集計を行った。

設置日数: 93日 (昨年度 110)
捕獲数: 8頭 (シカ 6, イノシシ 2) (昨年度 9)
罠・日: 638 (昨年度 895)
空ハジキ: 7 (昨年度 不明)

効率: 0.0125 頭/罠・日 (昨年度 0.0089)

昨年度と比較して、捕獲数は1減ったが、設置日数と罠・日が大分少なかったので、効率は上昇している。

お金の計算では、

[支出]

○狩猟者登録
狩猟税: 4100円 (有害捕獲従事による減額)
手数料: 1800円

○猟友会+保険など
支部猟友会会費: 4000円
京都府猟友会会費: 4000円
大日本猟友会会費: 1500円
任意保険費: 約4000円

○燃料・用具
燃料代: 約10000円
罠パーツ: 約4000円
リヤカー: 約30000円

[収入]

有害駆除協力金: 20000円
シカ捕獲奨励金: 8000円

ざっとこんな感じで、リヤカー分を除けばそれなりにシカの補助金で賄えている。もちろん時間は相当使っているが、それほど金のかかる活動ではない。

今年は新たな罠を買わずにリヤカーを買ったが、来年度は中型動物用の檻罠を2つほど購入できたら楽しみが広がって良さそうだ。

たべたことない

モダンメディアという学術情報誌の2015年6月号で、「食の安全・安心にかかわる最近の話題 特集 野生鳥獣肉の安全性確保に関する研究」という特集が組まれていた。狩猟者にとって興味深い内容が幾つかありそうなので、何回かに分けて紹介したいと思う。

門平 睦代 (2015) [野生鳥獣肉の安全性確保に関する研究] 食の安全・安心にかかわる最近の話題 5万人を対象としたウェブアンケート調査, モダンメディア, 61(6), 171-2.

この論説 (以下、(門平 2015))では、ウェブアンケートにより、野生動物由来の肉を食べたことによる健康被害の発生に関する要因を調べている。ウェブアンケートでは、いずれも狩猟鳥獣である哺乳類3分類 (シカ・イノシシ・クマ)と鳥類3分類 (カモ・キジなど・コジュケイなど)について、これまでに食べたことのある動物種とその頻度、誰が調理したのか、調理方法、食べたあと具合が悪くなったか、今後も食べたいか、の5項目を尋ねている。論説のタイトルにあるように回答数は50000で、対象は20歳以上 (本文からすると60代までが中心)の男女 (男性53.6%, 女性46.4%)、都道府県別の居住地は実際の人口比と類似しているとしている。

(門平 2015)の表1に、動物種別の喫茶頻度の生データが載せられているので、これを元にグラフを作成したのが、左図である。これを見ると、「食べたことはない」の割合が、最も低いイノシシでも85%となっており、アンケートに答えた大多数の人は狩猟肉を食べたことが無い (あるいは食べた記憶・認識が無い)と分かる。(門平 2015)の本文中では、「男性の方が女性より2~3倍ほど野生由来肉を食べている傾向」が見られると書かれているが、それにしても低い割合である。

食べたあと具合が悪くなったか、という質問の答えに関して、他の質問項目との関係性を解析したところ、リスク要因として上位にきたのは、「シカを自らで捕獲・調理した」、「カモのタタキ (半生)を食べた」、「イノシシの干し肉を食べた」であり、「有意差のあった要因すべてが、生の肉との接触、または、調理不完全の肉の摂取に関連していた」、としている。

狩猟者としては、肉に火をきちんと通して食べることを、自分が調理する時もそうであるが、他人に提供する時は特に意識し、食中毒の発生低減に寄与していきたい。市場に流通している牛肉や豚肉ほどの品質に持っていくことはできないが、それでもある程度の安全性が保たれていないと、野生肉消費の拡大は難しい。

ちなみに私は狩猟3年目で、これまでにシカ・イノシシ・ハクビシンの肉を合計で数十kg食べているが、イノシシの脂で胃もたれしたことを除くと、特に健康被害を被ってはいない。

これはかかせない

知り合いの猟師で、罠の見廻りをする際、車を降りた後も、名状しがたいバールのようなものを毎回持って行く人がいる。現場はきつい坂道で、体力の無い私ではゆっくり登り降りするだけで息が切れるというのに、なぜ推定2,3kgある大きめのバールを毎回持参するのか不明である。罠猟においては、シカ等の動物に脳震盪を起こさせるためバールなどの鈍器を使うことがあるが、その現場でシカが捕獲されるのは月に1匹程度であり、バールが必要になる確率は低いのだ。

罠猟では基本的に毎日見廻りをするので、この見廻りをいかに楽にするかということが重要になってくる。そこで今回は見回り時の荷物について書こうと思う。

罠に変化が無ければ、ただただ見廻るだけなので、日によっては一度も荷物を取り出さないこともある。とはいえ、捕獲があった場合や罠に修正が必要な場合に備え、ある程度の荷物を持っておくのが賢明である。

◯ 必ず持っておくべきもの

・狩猟者登録証 (有害鳥獣捕獲の場合は従事者証)
・狩猟バッチをつけた帽子 or ベスト (猟友会支給のもの)
・携帯電話

◯ バックパックに入れておくもの

・作業用手袋
私は二輪で見廻るので運転用の手袋も常に持っているが、罠や土をいじると汚れるので、作業用の手袋も用意する。上着のポケットなどに入れてすぐ取り出せるようにしている。

・小型のスコップ
罠の設置や修正をするのに使う。10個の罠を見廻っていると、3日に1度くらいは取り出して使っていると思う。

・ラジオペンチ
罠のワイヤーや金属部品を扱うのに用いる。またシカの捕獲時には、補助金申請のため歯を抜く必要があるので、ペンチがあると楽である。

・折りたたみノコギリ
樹木の剪定などに使われる歯の長さが20cm程度のもので、倒木により道が塞がるなどした場合に重宝する。また動物の骨やシカの角を切断するのにも使える。安いもので構わないが、替刃が売っているタイプの方が経済的である。

・ナイフ
シースナイフ1本に予備のフォールディングナイフ1本もあれば大体事足りる。私は刃渡り11cm程度のシースナイフを主に使っており、これがあれば鹿の差し止めと解体は可能。以前は腰のベルトに通していたが、急にナイフを抜かなくてはならない状況はほとんど無く、むしろナイフを見られて通報される危険性の方が高いので、今はバックパックに入れている。

・マルチツール
VictorinoxのハンティングXTというモデルを使っている。狩猟中に使うのは、罠設置時に根を切るためのノコギリがほとんど。予備ナイフも兼ねている。持っていると何かと安心。

・デジカメ
記録用に使う。捕獲に伴う補助金の申請には必須。もちろん携帯電話のカメラ機能でも構わないのだが、暗い林内で対象から距離を稼ぎたい場合も多いので、単品カメラを持っていた方が便利。一眼レフを持ち歩いていた時期もあったが、重いし嵩張るので止めた。

・針金
罠の部品として、またナイフと木の枝で即席の槍を作る際に用いる。強度と曲げやすさのバランスが良いものを選ぶ必要がある。

・スプレー塗料
補助金申請の際、動物の体表に塗料で捕獲日時を記し、カメラで撮影する必要がある。色は白が良い。

・医療品
山でもっとも危険な生物は、季節にも依るが、私はハチだと思っている。なので、抗ヒスタミン剤とポイズンリムーバーを持ち歩いている。他にも絆創膏や止血用のタオルなど、備えあればもしもの際に幾分かマシ。

・予備の罠標識
標識を付けるための紐も一緒に持っておく。

・筆記用具
補助金申請の写真撮影時に必要。私は油性マジックを使っている。

◯ 車やバイクに積んでおくもの

・ゴム手袋
解体作業で必要になる。2,3組持っていても損は無い。バックに入れておいても良い。

・ロープ
罠にかかった動物を固定して安全に差し止めするため用いる。多少かさ張るが、10m位あると便利である。殺した後も、斜面上部から下ろしたり、川から引っ張り上げたりする際に使う。消耗品ではないので、しっかり丈夫なものを購入したほうが良い。

・ビニール袋
切った肉を入れる。厚手で丈夫なものが良い。心臓やヒレなどの小さな部位を入れるのに適したサイズから、シカの後足が1本入るくらいのサイズまで、何種類か持っておくと良い。

・予備の罠や罠の部品
重いし嵩張るので持ち歩きたくはないが、1セットくらいは積んでおくと、状況に応じて罠を増やしたり交換したりできる。

・米袋
大きくて丈夫な紙袋として米袋が入手しやすい。解体した時の残渣を運んだり、JAの精米機から糠を取ってきて運ぶ際に便利。私は30Lの米袋を使用している。