にとうめのえもの

ニホンイノシシ♀

 2014年01月31日、私の設置していた罠に2頭目の獲物がかかった。ニホンイノシシである。今回は推定80kg、3歳 (師匠談)の雌である。

 罠を設置していたのは小川付近の獣道で、どうやら川を横切る際の主な経路になっていたようだ。師匠はそういう獣道を「渡り」と呼んでいる。イノシシやシカが生息している山に入れば、獣道を見つけることは難しいことではないが、罠を設置するのに都合がいい場所はそう多くない。獣が頻繁に利用する獣道で、罠の設置がしやすく (土がある程度柔らかい、ワイヤーを取り付けられる木がある、等)、なおかつ見廻るのも楽な場所が最適である。今回、イノシシがかかったのも、師匠が見定めた場所に設置した罠である。前回かかった場所と合わせて2箇所がその師匠と一緒に仕掛けた場所で、それ以降は自分で考えながら罠を仕掛ける場所を決めているので、次に罠にかかるとすれば、本当の意味で自分で獲ったということになろうかと思う。

めんきょそのいち

 狩猟に必要な免許を取得するには、各都道府県で行われている、狩猟免許試験を受験し合格する必要がある。この試験は、京都だと年3回行われるのが通例らしい。この試験に合格するためには、猟友会が行っている事前講習会を受けるのが確実である。しかしながら、この講習会は京都の場合で12,000円と少々お高い。京都市以外の京都府内では、狩猟免許取得に市町村レベルで補助が出るところがあるので(下記リンク参照)、半額から1/3程度の負担になるのだろうが、京都市には現在のところ補助制度が無い。

舞鶴市 – あなたもハンターになりませんか~狩猟免許の取得費用等を補助します~

というわけで、京都市に住む私は、事前講習会を受けず、試験に臨むこととした。

狩猟免許の参考資料

 知識試験は、30問/90分で、正答率70%以上で合格である。実際には、3択問題を1問解くのに1分もかからないので、ほとんどの受験者は30分程度で回答を終え退席していた。知識試験は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法令」、「鳥獣の保護管理に関する知識」、「鳥獣に関する知識」、「猟具に関する知識」の4分野に分かれる。以下、各分野について無料で読める参考資料を示すが、私は猟友会が用意している資料「狩猟読本」「図解 狩猟免許試験例題集」を購入し、「狩猟読本」を一通り読んだ上で「図解 狩猟免許試験例題集」を解き、間違えたところを見直す、という感じで勉強をした (試験当日の朝であるが)。少なくとも、「狩猟読本」には免許取得に必要な知識以外にも色々と役立つ情報が書かれているので、持っていて損がないと思う。

 まず「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法令」については、以下の資料を読めばよい。出題割合が高い分野であるので、下の方だけではおそらく不足。条文も一度は目を通したい。

鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律
狩猟制度の概要 || 野生鳥獣の保護管理[環境省]

私は前述のように「狩猟読本」を一通り読んでから、「図解 狩猟免許試験例題集」の問題を解いたが、この分野の正答率は86/95=90.5%であった。

 次に、「鳥獣の保護管理に関する知識」であるが、これは多くが常識問題なので、生物に多少なりとも関心を持っている人であれば、大体答えられるはずである。私は前述の方法で、この分野の正答率は25/25=100%であった。

 そして、「鳥獣に関する知識」であるが、これは4分野の中で満点がもっとも狙いにくいと思われる。とりあえず、以下のような代表的な狩猟鳥獣についてWikipediaから生態等の情報を調べるのが良いと思うが、こればかりは「狩猟読本」と「図解 狩猟免許試験例題集」を使わなければ満点は厳しいように思える。

イノシシ – Wikipedia
ニホンジカ – Wikipedia
キジ – Wikipedia
ヤマドリ – Wikipedia

いかにこの「鳥獣に関する知識」が難しいか示すため、「図解 狩猟免許試験例題集」から私が間違えた問題を2つほど挙げてみると、

84 タシギの飛び方についての次の記述のうち、適切なものはどれか。
ア 地面に沿って、低く直線的に飛ぶことが多い。
イ 大きな羽音をたて、一気に上空へ舞い上がることが多い。
ウ 鋭い鳴き声をあげて、雷光形に飛んだのち、上空へ舞い上がることが多い。

147 ミヤマガラスの季節移動についての次の記述のうち、適切なものはどれか。
ア 主に九州地方で繁殖し、冬期に本州以北に渡る。
イ 北海道で繁殖し、冬期には本州以北に渡る。
ウ 日本では繁殖せず、秋期に日本に渡ってくる。

という具合。私自身があまり鳥類に関して知識が無いだけかも知れないが、これは難しい問題だと思う。しかし「狩猟読本」を読んでおけば、出題されやすい知識が書いてあるので、この分野の正答率は139/154=90.3であった。

 最後に、「猟具に関する知識」であるが、これは「わな猟免許」の場合は、以下のキーワードで適当にネット検索して、引っかかった画像やページを眺めておけば大丈夫である。

くくりわな
はこわな
はこおとし
とらばさみ

網猟の場合も大して変わらないだろう。私は「わな猟猟具」についてで、この分野の正答率は20/20=100%であった。

 というわけで、今回は狩猟免許試験のうち、知識試験について書いた。次回、実技試験についても書きたいと思う。

はじめてのえもの

推定100kgのニホンイノシシ♂

2014年01月27日、私が設置していた罠に初めて、獲物がかかった。推定100kg、5,6歳 (師匠談)のニホンイノシシ (雄)である。

Wikipediaにはイノシシの寿命について、「野生下での寿命は長くて10年であり、一年半で性成熟に達する」と書かれている (イノシシ – Wikipedia)。イノシシは狩猟獣の中でも価値の高い部類に入り、狩猟圧が大分かかっていることから、特に都市部周辺の山においては、5,6歳に達する個体は珍しいそうである。

そんな珍しい大型個体が初めての狩猟による捕獲個体になったわけで、私としては大興奮であった。はっきり言って、モンハンなんかやってる場合ではない! (かくいう私もプレイ時間はMHP3だけで300時間を超えているが)

罠猟の場合、設置した罠は原則として毎日見廻らなければならないので、私も少し遅めではあるが、毎日午前中の10時頃に狩場へ赴き、罠を確認していた。しかし、法律で決められた上限、30個もの罠を仕掛けているならともかく (それはそれで見廻りに時間がかかるが)、4つ程度仕掛けたところで、そう簡単に獲物がかかるわけがない。だから毎日、「今日もかかってねぇな」とため息をつき、3日ぐらい続けた後は「どうせ今日もかかっちゃいねぇだろ」という感じで見廻りに出発していた。ところが、罠猟を始めて6日目、期待をせずに罠を仕掛けてあった場所に向かうと……

罠にかかったニホンイノシシ

ニホンイノシシ (Sus scrofa leucomystax)である!私はこれを100m程度離れた位置から発見したのであるが、最初はこの動物の尻だけが見えていたため、大きさからしてツキノワグマではないかと疑った程である。

恥ずかしながら、私が野生のニホンイノシシを見たのは、おそらく4年ぶり2回目で、前回は登山中に、ウリ坊を引き連れた中型個体を見ているのだが、今回のようにまじまじと観察できたのは初めてなのだ。

その後、猟銃も持っている師匠に連絡を入れ、撃ってもらった。冒頭の写真は撃たれた直後のものである。なお、写真を見るとイノシシがいるすぐ側に道があるように見えるが、これは一般の人が通るような登山道や生活道路では無い。

今回記事で書いた内容には、前段階として狩猟免許の取得から罠の設置、後段階として解体から消費と色々付随する部分があるのだが、そういった点も含めて、今後このBlogで記していきたいと思う。

私は哺乳類や鳥類が専門では無いが、現在は大学で生態学を学んでいる身である。狩りの対象となる動物の生態についてだけでなく、農業・環境が関わる問題、また法律に関することなど、様々な側面から狩猟について考え、記事を書いていけば、役立つ情報を発信できるのではないかと考えている。