ぎょうむぼうがい

2018/11/1と2018/11/13に、有害鳥獣捕獲のため設置していた檻にかかったニホンジカを、何者かによって逃されるという被害が生じた。

2回とも同じ檻で逃されてしまったのであるが、その顛末を記す。

11/1は、私が午後に檻の確認に行くと、写真上のように扉が落ちていて、中に動物はいなかった。

檻の場合、上から落ちてくる枝葉や、中の餌を食べに来る小鳥などによって、仕掛けが作動し扉が落ちることもあるが、檻の中の糠が無くなっており、踏み荒らした跡もあったので、大型動物が入って扉が落ちたはずである。

私が不思議に思っていると、近くで作業していた人から、午前中に見たときは小さいシカが入っていた、との証言を得る。

この檻は、一旦落ちた扉が動物の力で持ち上げられることがないよう、ロックがかかる仕組みになっている (写真下参照)ので、人間以外が扉を開けるのは不可能である。

私は最初、同業者が何らかの理由で檻に入ったシカを殺して持ち去ったのではないかと考えたが、血の跡や引き摺った跡がない上、この場所に車で入るには施錠された門を通らないといけないため、その可能性は低いという結論に達した。

持ち去られたのではないとすると、逃された、ということになる。

証言によれば、檻に入っていたのは小さいシカだったということなので、角が無い個体であったとすると、人が入口正面に立って扉を持ち上げても、逃がす際に怪我をする心配はあまりない。

一応、この檻を置いている場所の施設管理者や、共に有害鳥獣捕獲を行っている人に報告・相談したが、この日は「まぁこんなこともあるか」ぐらいの気持ちで諦めることにした。

11/13は、私が早朝に同じ檻を見に行くと、子ジカが入っているのを発見した。

しかし私はこの日、朝から昼過ぎまで仕事が入っていたため、仕事が終わってからシカを回収することにし、子ジカが入っているのを確認しただけでその場を立ち去った。

午後になって仕事が終わったので、共猟者と電話で待ち合わせ、一緒に檻に入ったシカを回収しに行ったのであるが、着いてみるとなんと檻の中はもぬけの殻。

血の跡や引き摺った跡が無いのは前回と同じ、またしても逃されてしまったのだ。

同じ場所、同じ檻で短期間に2度も逃された上、今回は檻に入っていたシカを自分の目で確認している分、逃されたのが腹立たしい。

シカを始めとする野生動物は、無主物 (所有者のない動産)であると一般に理解されるが、

民法 第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

とあるので、罠に野生のシカが掛かった場合、そのシカに対する所有権は、罠の設置者が取得する、と考えられる。

罠に掛かったシカを、罠の設置者以外が持ち去ったとすると、これは窃盗罪が適用できると思うのだが、逃したとなると窃取に当たらず、窃盗罪にはならないかも知れない。

そういった場合でも、業務妨害罪という便利な罪状があり、このうち威力を用いる場合は威力業務妨害罪が問える、と考えられる。この罪状には”三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金”が処される。

有害鳥獣捕獲は”業務”として十分成り立つだろうし、檻の扉をあけて中のシカを逃がす行為は”威力”の行使と判断できる。

従事者である私からすれば、シカ2頭を逃されたことにより、捕獲奨励金として支払われる16,000円〜44,000円 (幼獣か成獣かで変動)の損失を被っており、シカが檻に捕らえられるまでに費やした時間と労力、それにエサ代やガソリン代などの経費が無駄にされたわけである。

逃した人はおそらく、小さなシカが檻に入っているのを見て可哀想に思い、逃して”あげた”、殺生をする野蛮な猟師から救って”やった”、ぐらいに思っているのだろうが、逃された狩猟者 (有害鳥獣捕獲の従事者)と、食害に苦しんで捕獲を依頼している農業従事者からすれば、酷い話である。

しかし犯人 (おそらく2回は同一人物)は、単なる好奇心や出来心でなく、それなりに強い意志を持って、檻に入ったシカを逃がすという行為に及んでいると予想される。

そういった相手には、近くにメッセージを書いた紙をぶら下げて、シカを逃さないようにお願い、あるいは警告するといった方法では効果がないと私は考えたので、もっと抑止力を発揮すると思われる2つの対策を行うことにした。

1つは、自動撮影カメラの設置である。

動物の生息調査に用いられる自動撮影カメラを檻の近くに設置し、檻の扉を開けようとすれば顔が写るように設置した。蓋は勝手に開けられて記録媒体や電池を抜かれることのないよう南京錠で固定、本体も太めの幹に回したワイヤーと南京錠で固定した。これならそう簡単には自動撮影カメラを持ち去ることはできない。

自動撮影カメラは目立つ位置に設置したので、開けるところを実際に撮影し警察に突き出してやりたいというよりは、犯人が檻を開ける間にカメラに気付くことで、抑止ができればよいと考えている。

2つ目は、捕獲発見時に檻の扉を南京錠とワイヤーで固定することである。

私は原付きで罠を見廻りし、捕獲があった場合は軽トラで回収する、というパターンが多いので、原付きで見廻って発見したあと、軽トラで戻ってくる前に逃される可能性がある。そこで、原付での見廻り時に、檻の扉を固定できるワイヤーと南京錠のセットを持ち歩き、捕獲を認めた場合はそれらで檻の扉と本体を留め、南京錠を開けなければ檻の扉を開けることができないようにするのである。

この対策は、逃される前に檻に入った獲物を確認しなければ実行できないが、 11/13の場合のように、自ら捕獲を確認した個体を逃される、という事態は避けられる。また、もし犯人が檻の本体と扉を固定しているワイヤーを切るか南京錠を破壊するなどした場合、器物損壊罪も適用できることになり罪が重くなると考えられる。

とりあえずこの2つの対策を行って様子を見るが、同様の事態や何らかの進展があった場合には、随時このBlogに書こうと思う。

さわがにいかに

サワガニの採り方と食べ方について書こうと思う。

シカやイノシシを対象とした狩猟を行う山には大抵、水の流れがあるものであり、そういった水の流れには大抵、サワガニが生息していることだろう。

私が狩猟を行っている山では、比較的少ない労力で、一定量のサワガニを捕獲することが可能であることが分かったため、新たな食料確保の手段としてサワガニ漁を行った。

やり方は簡単で、シカの前足を川に浸けておき、1〜2晩置いてから見に行って、肉に群がっているカニを手で捕まえるだけである。

ポイントとしてはまず、肉は完全に水中に沈め、上に石を載せておく。こうしないと、キツネやイタチ等の動物に肉を持っていかれてしまう。
あまり深いところに沈めると、カニを捕獲するのが難しくなるので、流れがゆるくて適度に浅い場所を選ぶとよい。
水深のある場所でやろうと思うのであれば、カニ籠を使うべきだと思う。
肉の上に石を置くことで、サワガニは石と肉の間で安心して過ごすことができると思われる。

次に、設置場所の間隔であるが、1本の流れの中に複数の肉を沈める場合は、少し離れた場所にする方が良いと思われる。肉の匂いを嗅ぎつけて集まって来るサワガニは、肉を設置した場所より下流側から来るはずで、最初に嗅ぎつけた肉に辿り着いてしまえば、それより上流にある肉へ向かおうとはしないと思われるからだ。水流の多さやサワガニの生息密度などを想像して、効率的に捕獲が行えるよう、肉を沈める場所を選定したい。

なお、サワガニは最大で10年程度の寿命があるとされ、野外で同時期に見られる個体のサイズには、かなりバラツキがある。小さい個体は逃してやるのが、資源保護のためにも良いだろう。

私がサワガニを採っている場所では、同じところに肉を置き続けた場合、1回目と2回目に見に行った際は、大きいサワガニが群がっている(10匹〜30匹程度)が、3回目になると大きいのは1,2匹になってしまう。こうなると、同じ場所に肉を沈め続けても、今後の採れ高は期待できないので、肉を移動させることになる。

サワガニを持ち帰る際には、喧嘩によるハサミや脚の欠損に注意すべきである。基本的には水を張ったバケツにポイポイと放り込んでおけば良いのだが、あまりに密度を高くすると、サワガニ同士が喧嘩して、家に着く頃にはバケツの底にモゲたハサミや脚がいっぱい沈んでいる、という状況になってしまう。これをなるべく回避するため、私はバケツの中に枝葉を沈めておき、少しでも足場や隠れ家をつくるようにしている。

家に持ち帰ったサワガニは、1晩か2晩、適当な水槽に入れて泥抜きをする。私の場合、ろ過装置やエアーポンプなどを備えない普通のプラケに水を張って一晩放置するのだが、これでも採ってきたサワガニが死ぬということはあまりない。ただし、持ち帰るときと同様、サワガニの密度には配慮すべきである。加えて最も注意すべきは、温度である。サワガニは冷たい沢に住んでいるので、水温が上がるとあっけなく死ぬ。私は主に4〜5月をサワガニ猟の時期としているが、家の中で直射日光の当たるところ、ポカポカと暖かいところに、泥抜き用の水槽を置いておいたりすると、翌朝、多量のサワガニが全滅しているという恐ろしい状況になりかねない。泥抜き中のサワガニはガチャガチャと五月蝿いので、私は風呂場に放置するようにしている。

泥抜きの終わったサワガニは、流水で軽く洗いながら、大きさごとに選別し、食品用密閉袋に入れていく。調理する際は、サワガニのサイズが一定であるほうがやりやすいし、器に盛ったときの見た目も良い。食品用密閉袋にサワガニを生きたまま入れたら、あとは冷凍庫に入れるだけである。もちろん冷凍せずにそのまま食べても良いが、生きたサワガニは扱いにくいので、一旦冷凍しておくと楽である。

調理法としては、素揚げか甘露煮がおすすめである。いずれにしろ、寄生虫がいるので十分に加熱する必要がある。