おにくのかんり

シカ肉

 私が共同で設置していた罠にニホンジカがかかった。檻1+括り罠5という構成だったのだが、同日に檻と括り罠で1頭ずつ計2頭の捕獲である。

 私は捕獲時に参加できなかったので罠にかかっている写真などは撮れなかったが、肉だけは分け前を貰ってきた。

 以前、猟期にイノシシが獲れたときは、肉を300-500g程度に切り分けて、適当なビニール袋 (コンビニのレジ袋等)に入れて冷凍したが、今回からはZiplocに入れることにした。もっと良いのは真空パックに入れることだが、機械も高いし専用の袋が必要でそこまでの投資をしていいものか不安である。まぁレジ袋でも3ヶ月くらいの保存には十分耐えるので、より密閉性と見栄えのいいZiplocなら3ヶ月程度で食べきる分には何も問題なかろうと思う。ちなみに写真の袋はZiplockフリーザーパック大で、前足を解体して出た100~300gの塊が複数、合計して830gの肉が入っている。この大サイズなら完全なブロック状でも1.5kg、少し細かい塊であれば合計2kgは入ると思う。一旦冷凍してしまうと、解凍は袋単位になるので、個人で食べる分はより少ない量で一袋とし、袋のサイズも小さいものが適していると思う。

 袋には、日付、動物の種類、雌雄、肉の部位、捕獲方法、重量、シリアル番号を書いている。写真の袋の場合、シリアル番号は140629DM101となっているが、これは
|6桁日付|”D”eer|”M”ale|同日に獲れた性別の同じ個体の中での番号1桁|袋の番号2桁|
となっている。これなら、同じ日に雄だけで10匹以上獲れるとか、1個体から100袋以上の肉がとれるとかしない限り、番号が被らないようにできる。このシリアル番号を最初の列に持ってきたスプレッドシートを作り、袋に書いたような情報や、肉の保存場所、用途などを記しておけば、肉を袋単位できちんと管理できるだろう。

 肉の保存場所については、当然自宅の冷凍庫にも入れているのだが、学生の一人暮らしで使っているものなのでそれほど沢山の肉を収容できるわけではない。そこで今回からは、以前より計画していた分散肉保存システムを導入することとした。まぁ簡単に言えば他人の家にある冷凍庫に間借りするのである。冷凍庫に2~3kg分の肉を入れられるスペースが空いている人は多いので、そこに預けてしまうのだ。自分の冷凍庫に15kg分くらいの容量があるとして、5人に3kgずつ渡せば、合計30kgも冷凍保存できてしまう。当然、冷凍庫を貸してくれる人の分け前も用意する必要があるので、預けるときは例えば1kgは当人が食べていいが、2kgは保存しておいてくれ、といったように頼める。シカ肉の価値はきちんと血抜きされた良い部位で500円/100g程度であり、預け先の人がその価値を50円/100gぐらいにしか認識していなかったとしても、1kgぐらい渡せば冷凍庫の電気代分ぐらいは余裕でペイできる。ここにおいても、前述したシリアル番号による管理は役に立ち、スプレッドシートに預け先情報や用途を書いておけば良い。

しかのあしきり

ニホンジカが足切りして逃げた跡

 前回 (「にまんにせんえん | 狩場の馬鹿力」)、ニホンジカがかかった場所のすぐ近くでまた罠が作動していた。しかし空ハジキではなく、足の先端が残されていた。足切りである。

 最初の写真で、赤丸で囲った辺りが罠を設置していた場所 (足を踏み入れると作動する部分)、緑が罠の根元を括り付けていた木、そして青が作動した後、引き出されたバネ部分と残されたニホンジカの足である。

故有事: シカの前足と後足の蹄 Cloven-hoofs of sikadeer’s fore & hind legs – [1]
ニホンジカの被害防止パンフレット (兵庫県森林動物センター) – [2]

 [1]によると、シカは前足の方が後足より大きいが、差は僅かである ([2]では「大きさはほぼ同じ」と書かれている)。私には、残されたニホンジカの足が前足のものか後足のものかは区別できなかった。

 私が師匠から聞いた話では、足切りされるのは罠が後足にかかったときが多いらしい。前足にワイヤーがかかった状態では、獲物が助走をつけて引っ張ろうにも、前足がガクッとなって躓くためである (本当かどうかは分からない)。この助走をつけさせないために、ワイヤーはなるべく短くする (余った部分は木に巻きつける等)ことも教わった。ちなみに、罠がかかるのは圧倒的に前足が多いらしい。実際、私がこれまで捕獲した計3頭のニホンイノシシ・ニホンジカも、全て罠は前足にかかっていた。これは、奴等が前進を基本とし、なおかつ歩くときは前足で踏んだところを後足も踏むようにしていることに起因する。ただし坂道等の条件により、後足が前足で踏んでいないところを踏むようなことがあると、罠は後足にかかる。

足切りされて残ったニホンジカの足

 足切りへの対策としては、ワイヤーの長さを短くする (今回は大分短い方である)ことや、見廻りの頻度を上げる (現在は1日1回。罠の周囲が大分荒れているので、一定時間はその場にいたと思われる)以外に、ワイヤーの途中に丈夫なゴムチューブ等を取り付ける方法がある。これは、釣りで使われるショックリーダーのようなものである。今後も足切れが繰り返し生じる場合は検討したいと思う。

 今回はシカということで危険性は比較的少ないと思われるが、イノシシの場合には罠にかかって興奮した状態で足切りにより解き放たれると、人間に害を及ぼす危険性が高まることも考えらる。また、足の先端が無い動物が人目に触れると、猟に対して悪感情を持たれることもあるだろう。それに第一、こちらの労力的にも足切りされるのは痛手である。私はまだ経験が浅いので、自分の狩猟方法でこういった事態がどれほどの頻度で発生するのか分からないが、今後も記録・観察をしっかりし、対策を考えて行きたい。

にまんにせんえん

罠にかかって死亡したニホンジカ♂ 2014年04月20日、私の設置していた罠にニホンジカがかかった (有害鳥獣駆除)。比較的大型の♂である。ただし、かかった後に怪我をしたためか、発見時には死亡していた (昨日の同じ時間帯にも見廻りをしている)。

 罠を設置していたのは広葉樹二次林の斜面で獣道になっていたところである。比較的土も柔らかく、落ち葉も積もっていたので、罠の設置は楽であった。

 このように死後時間の経ったものは食用に適さないため、埋設となった。

ニホンジカの体表に付着していたダニ

 なお、死亡していたニホンジカの体表面を観察したところ、多数のダニを発見できた。私はダニの同定ができないが、今後は適当にサンプルを取っておくのもいいかなと思っている (今回は容器が無かったため採取せず)。