しかのあしきり

ニホンジカが足切りして逃げた跡

 前回 (「にまんにせんえん | 狩場の馬鹿力」)、ニホンジカがかかった場所のすぐ近くでまた罠が作動していた。しかし空ハジキではなく、足の先端が残されていた。足切りである。

 最初の写真で、赤丸で囲った辺りが罠を設置していた場所 (足を踏み入れると作動する部分)、緑が罠の根元を括り付けていた木、そして青が作動した後、引き出されたバネ部分と残されたニホンジカの足である。

故有事: シカの前足と後足の蹄 Cloven-hoofs of sikadeer’s fore & hind legs – [1]
ニホンジカの被害防止パンフレット (兵庫県森林動物センター) – [2]

 [1]によると、シカは前足の方が後足より大きいが、差は僅かである ([2]では「大きさはほぼ同じ」と書かれている)。私には、残されたニホンジカの足が前足のものか後足のものかは区別できなかった。

 私が師匠から聞いた話では、足切りされるのは罠が後足にかかったときが多いらしい。前足にワイヤーがかかった状態では、獲物が助走をつけて引っ張ろうにも、前足がガクッとなって躓くためである (本当かどうかは分からない)。この助走をつけさせないために、ワイヤーはなるべく短くする (余った部分は木に巻きつける等)ことも教わった。ちなみに、罠がかかるのは圧倒的に前足が多いらしい。実際、私がこれまで捕獲した計3頭のニホンイノシシ・ニホンジカも、全て罠は前足にかかっていた。これは、奴等が前進を基本とし、なおかつ歩くときは前足で踏んだところを後足も踏むようにしていることに起因する。ただし坂道等の条件により、後足が前足で踏んでいないところを踏むようなことがあると、罠は後足にかかる。

足切りされて残ったニホンジカの足

 足切りへの対策としては、ワイヤーの長さを短くする (今回は大分短い方である)ことや、見廻りの頻度を上げる (現在は1日1回。罠の周囲が大分荒れているので、一定時間はその場にいたと思われる)以外に、ワイヤーの途中に丈夫なゴムチューブ等を取り付ける方法がある。これは、釣りで使われるショックリーダーのようなものである。今後も足切れが繰り返し生じる場合は検討したいと思う。

 今回はシカということで危険性は比較的少ないと思われるが、イノシシの場合には罠にかかって興奮した状態で足切りにより解き放たれると、人間に害を及ぼす危険性が高まることも考えらる。また、足の先端が無い動物が人目に触れると、猟に対して悪感情を持たれることもあるだろう。それに第一、こちらの労力的にも足切りされるのは痛手である。私はまだ経験が浅いので、自分の狩猟方法でこういった事態がどれほどの頻度で発生するのか分からないが、今後も記録・観察をしっかりし、対策を考えて行きたい。

にまんにせんえん

罠にかかって死亡したニホンジカ♂ 2014年04月20日、私の設置していた罠にニホンジカがかかった (有害鳥獣駆除)。比較的大型の♂である。ただし、かかった後に怪我をしたためか、発見時には死亡していた (昨日の同じ時間帯にも見廻りをしている)。

 罠を設置していたのは広葉樹二次林の斜面で獣道になっていたところである。比較的土も柔らかく、落ち葉も積もっていたので、罠の設置は楽であった。

 このように死後時間の経ったものは食用に適さないため、埋設となった。

ニホンジカの体表に付着していたダニ

 なお、死亡していたニホンジカの体表面を観察したところ、多数のダニを発見できた。私はダニの同定ができないが、今後は適当にサンプルを取っておくのもいいかなと思っている (今回は容器が無かったため採取せず)。

ゆうがいはじまる

コバノミツバツツジ

 京都市の有害鳥獣駆除が4月5日から始まっている。私も猟友会に所属しており、なおかつ地域に山林や畑が存在するため、従事者となっている。

 通常の猟期における狩猟は、狩猟者が都道府県に狩猟税を払って行うが、有害鳥獣駆除事業では有害鳥獣を捕獲する度にお金が貰えるシステムである (出猟自体に対する支払いも存在するが少額)。私の場合は京都市の猟友会に所属しているため、許可証は京都市から発行されている。

 先日、罠の設置場所に関する打ち合わせのため入山したが、コバノミツバツツジと思われる花がたくさん咲いており、新緑の緑と合わせて美しかった (写真では新緑があまり写っていないが)。殺風景な通常猟期の狩場よりも、動植物を楽しめそうである。ただし、既にカも発生しており、今後夏が近づくにつれ、ますますカやダニに悩まされもすることだろう。